りんごごりららっきょう

思っていること、昔の思い出

遺産を譲りますから、お願いします!

わたしの今の仕事は癌の告知を受けている人のケアをする仕事があります。

 

この仕事を意思決定支援と言います。

この仕事はわたしが正解と思える選択肢に導くのではなく、患者さんが自分の気持ちを整理しながら自分にとっての正しい選択肢が探せるようにお手伝いする仕事です。

告知は

自分の人生に

癌になること

が予定になかった人にとっては、とても辛い経験となります。

 

藁をも掴む思いということわざがほんとにしっくりします。

 

 

80歳代の男性でした。

その方は、大腸癌が内視鏡にて見つかりました。

その時の診察場面から立ち会いました。

医師から癌だと思うが、病理結果が出らまでもう少し時間がかかる。

それまでの間に他にも転移がないか検査をします。

と説明されました。

かなり動揺していました。

診察の後、お話を聞くと、手で顔を隠し、何度も

 

何も症状ないのにこんなことってあるのか?

間違いでしたってことはないか?

と話していました。

 

お話を聞くと奥様はもう他界されており、息子さんと二人暮らし。

その息子さんが難病で寝たきり。

自宅で人工呼吸器を、使って息子さんは生活しているそうです。

 

頼れる人は近くにはおらず。

 

こんな話するのもどうかと思うが、息子がこんなことになり、息子を看取るまで自分は死ねないって思って生活してた。

まさか、自分が癌になるとは思ってなかった。

あたまが真っ白で、どうしていいかわからない。

とすごく混乱した様子でした。

 

どうか、私と息子のことをお願いしたい。どうせ死んでしまうならお金なんて残したって仕方ないんだ。

財産を全部やるから、俺と息子を看取って欲しい。ほんとお願いします。

 

深々と頭を下げて、私の手を握り何度もお願いと言います。

 

病院の相談窓口も利用しながら、病院全体でサポートすることを伝えても、

そういう話ではない!

と言いました。

今の心配事を話せる相手がおらず、先行きの不安から押しつぶされそうになっています。

多分

誰かに支えてもらいたいのだと思います。

病院として支えるのではなく、誰かに甘えて大丈夫だと言って欲しいんだと思います。

 

医療者は、仕事としてその人のベストを模索しながらサポートするけど、家族にはなれない…。難問です。

 

注意!

私の仕事は守秘義務があるので、これらの患者さん情報は個人が特定できないよう少し現実とは異なったおります。

 

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