りんごごりららっきょう

思っていること、昔の思い出

きみはいい子

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 この本、読みました。初めて読んだ作家さんでした。

あるベッドタウンでの様々な家族のことを書かれた短編集でした。

読みやすかった。

テーマは「虐待」でしょうか。

虐待を取り扱った作品はどれも暴力内容がえげつなく、そこばかりが注目されたり記憶に残ったりします。

内田春菊さんの「ファザーファッカー」は高校生の時に読みました。

そういうものと無縁の幸せな生活を送らせてもらった私は、小学生、中学生の女子がそういう性の対象として男性に見られてしまい生活を送る事があるのだということを知りとてもおびえました、ページをめくるたびに指先が震え読みたくないけど気になる。そのような気分で読み進めた最初の本でした。

この本を薦めてくれたのは同級生だったのですが、同級生がどんな気分で私に薦めたのか複雑な思いを抱いたのを覚えています。

 

トリイヘイデンのシリーズは読んでアメリカもなのか!と虐待がどこの国でも起きている事なのだと知りました。

「タイガーと呼ばれた子」では虐待の描写が怖く、こういう子は一生幸せになれないのかもしれない。大人はどうして子供をこのような環境に置くのかつらくなりました。つらくなりすぎて、こういう本とは少し距離を置いていました。

 

「きみはいい子」は全く、どんな内容なのか知らずに表紙の絵がきれいで手に取り図書館で借りてきました。

野田市の虐待死された子のニュースが連日続き、コメンテーターの憤りもわかるのですが、児童相談所の所長さんの記者会見の様子が痛々しく、だれも幸せにならないニュースなのでつらくなっている時期です。

この本、虐待を解決するとか、見つけ出して救うとか劇的なことは起こりません。

でも、ちょっとしたやり取りに救われたり、心配していることを伝える大人がいたり、

ほんと身近な人間関係を切り取ったように見えました。

 

虐待っていうとすごくつらい経験をして悲しいおもいをして過ごしている子供たちだと思う。

でも、虐待している親もわかっているけどやめられなかったり苦悩していたり。それをおかしいと思っている人もどう介入していいかわからなかったり。

 

私は、テレビのコメンテーターなどが

救える命だったのにとか

虐待をしていた親を人間じゃない

ように報道したり、わかっていても救いの手を出せなかった人たちを批判していく人たちがどうしても好きになれません。

彼らが言っていることはすごく真っ当だし。正しいことはわかる。

でも批判すること、正しいことを言うことはとても簡単なんです。

でも、そんなのわかっているけど正しいことができない環境もあったりする。

児童相談所の落ち度はほんとにありすぎてあきれるほどですけど、そこを叩きつづけても亡くなった命は帰ってきません。

虐待をする人が鬼畜のように報道されますが、でも、この本は、虐待と思えるようなことはどこでもある可能性があって、どの人も自分の子供に暴力を振るう可能性があること。よいことではないけど、特別なことではなく、すごく身近にあるのだということを静かに教えてくれたように思いました。