オプジーボについて
ノーベル賞受賞に沸いて
オプジーボが再度脚光を浴びている。
免疫チェックポイント阻害剤は第4のがん医療と言われている。
テレビで作用方法などを何度も特集でやっており
なんにでも魔法のように効果があるような印象を受けてしまう。
現在、藁をもすがる思いで過ごしているがん患者さんたちは
このようなテレビなどの情報は気持ちが揺れる。
ネットで免疫療法と調べると保険適応ではない少し胡散臭いような治療につながってしまう。
ここで化学療法について
まず、がん拠点病院やそれに準ずる病院で行われている治療は「標準治療」といわれる治療を医師から勧められる。医師はガイドライン(医師の教科書のようなもの)に準じながら治療を勧める。
標準治療という名前から患者さんには何度か「標準ではなく、お金をかけてもいいからもっといい治療を受けたい」と訴えられたことがある。
標準治療は「いま、勧められる科学的根拠のある最善の医療」のことをいう。
医師の経験でこの抗がん剤とこの抗がん剤を組み合わせて治療を勧めてみようというわけではない。
なかにはそういうことをしている医師もいる。
保険適応になっている治療とそうではない治療は現時点で科学的な根拠があるかないかである。
よく新聞の広告などで「この治療で末期患者が奇跡の生還」「医師が匙を投げた患者が復活!」みたいな心踊らされる記事を目にする。
標準治療になれるまでに「治験」という厳しい試験を乗り越え現段階にある治療とその治療のどちらが効果があるかという試験を全世界で行っている。
その「治験」の患者は胃がんだったら胃がんというように比較対象が同じ病気に限られている。それ以外にも様々な条件がある。
新聞の広告にあるような治療はその背景にどのようながん患者がどのように使用してどれくらいがんに効いたのか、
予後は飲まなかった場合と比較してどうだったかは
おしえてくれない。
実際にそのような薬なりサプリメントなりを購入してもCTをとってがんがどれくらい小さくなったかの効果の評価はしていない。販売元にそのデータがないのだとおもう。
そして、結構な高額だ。
標準治療は保険適応の治療なので国が7割~9割以上の医療費を払ってくれる。その価値、データがあるということ。
お金のある芸能人だって筋肉もりもりのスポーツマンだってがんで亡くなってしまうのは それががん医療の限界だということ。
データが出されている標準治療を行っても今の治療の限界はある。
オプジーボは確かに予後を伸ばす事ができている
でも、実際には使用しても亡くなってしまう患者はおり、副作用で治療が継続できない患者だって背景にはたくさんいる。
ノーベル賞は素晴らしいことで、研究者たちの大変な苦労からがん患者の予後は確実に伸びていると治療の現場にいれば実感できる。
でも今も、藁にもすがるような気持ちで過ごしている患者に期待しすぎないように情報はきちんと流してほしいと思う。
今日も実際に、保険適応の治療選択肢はなくなり緩和ケアを勧められた患者からオプジーボを使ってほしいとの電話の対応をした。
その患者のがん腫では、まだ保険適応が通っていない事をつたえると「でもテレビでは~」「ネットでは~」と納得はできていなかった。時間をたくさん使って説明したけど、患者さんを落ち込ませるだけの結果だった。
元気でいるときには、このような情報はニュースの一つとして聞き流せるけど、病気で苦しんでいる立場の人は情報の1つ1つに心が動かされる。
がんの芸能人が亡くなれば、次の日の患者は「ショックだった」と落ち込む。
たくさんある情報を、自分はどうなんだ?って取捨選択する必要があるけど患者さんはそれがむずかしい。
化学療法は標準治療であっても オプジーボであっても 不確かな治療であるからだ。
効果があるかどうかはやってみないと分からないのだ。%の話だから。
今日の患者さんの電話での対応時、長時間になってしまい、忙しい時間帯だったため他のスタッフには負担があったのだと思う。
でも、私は、患者さんのその気持ちを「理解していない」「やっぱりね。電話あると思ってた」と慣れてしまう感覚にならないようにしていきたい。誠実に対応できる人で居続けたい。