ばあちゃんのミカン
ばあちゃんがボケてから死ぬまで自宅で父と母が介護していた。
ばあちゃんはミカンが昔から大好き❤。
隣との垣根には、なんの種類がわからないけどミカンの木があった。うちと隣には80センチくらいの段差があってういがたかくなってきた。
、ブロックでの仕切りがあったんだけど
冬になると黄色い大きめの実がなってたんだけど、隣の人が収穫してるとこ見たこともなかった。
垣根がわりにミカンの木だから、4本くらい並んでて、大きいからうちの陽当たりが悪くなる、
なんで、食べないもんをあんなに育ててるんだ!って影で文句言ってた。
ばあちゃんの部屋は、そのミカンの木の隣で、マッサージ機にかかりながら隣の庭を見てた。
ある時、私がふっとばあちゃんの部屋を覗くと、ばあちゃんはその80センチくらいの塀をよじ登ってこちらへ来てた。両手にそれぞれミカンを一個ずつもって。
ばあちゃん90歳近かった。
足腰はしっかりしてたから、すごい動きが良かった。
ボケたばあちゃんは、マッサージにかかるとミカンが目に入り隣に収穫に行っては部屋で食べてた。
そのミカン、とっても酸っぱくて、だから、隣も収穫しなかったんだろうけど
ばあちゃんは、そのミカンの皮をむいて一口食べ、
すっぱ〜って言って食べるのをやめる。
でも、短期の記憶も忘れるから
しばらくすると
食べかけのミカンが目に入り
また食べる
そして
すっぱ〜って言って食べるのをやめる。
の繰り返しをしていた。
デイサービスから帰って来て、夕ご飯までのちょっとした時間に食べちゃうもんだから、
夕飯が入らなくなる。
でも、お腹がいっぱいの理由を忘れちゃうから、
なんだか食欲がない、調子が悪いと言っていた。
ゴミ箱には大量のミカンの皮があったんだけどね。
ばあちゃんがそのミカンに手を出さないように、父はミカンを買って来るんだけど、目に入ると採りにいくからこまってた。
今のミカンは甘いけど
甘いミカンは
木の根っこに砂糖をまくげなよ!とばあちゃんは主張してた。